毛筆筆耕の仕事依頼を受けて、すぐに筆耕作業ができるように準備する道具があります。
これから筆耕の仕事をされる方に、筆耕時に必要な道具と、あると便利な道具10選を紹介します。
筆耕作業に必要な道具
これまでの筆耕作業に使用していた道具を、必ず使うものを<必須編>、代替可能なものを<常備編>、筆耕作業に集中するのにあると便利なものを<便利編>に分けて紹介します。
道具<必須編>
筆耕作業をする上で、必要とされるものは5点。
①ライトテーブル②墨汁③小筆④硯⑤プリンターについて、使用用途や私が使用しているものなどをピックアップしてみました。
①ライトテーブル
①ライトテーブル
ライトテーブルは賞状やはがき等を筆耕する時に、レイアウトの下敷きを映し出してくれる道具です。ライトテーブルがあれば筆耕する賞状に文字や線を直に書き込むことなく、レイアウトの下敷きの上に賞状をのせて筆耕すれば、曲がったり字の余白を間違えたりすることなく綺麗に仕上げることができます。
またライトテーブルがあれば、パターン化された筆耕依頼時に、レイアウトした下敷きを保管しておけば、次の筆耕依頼が来た時に一からレイアウト下敷きを作る時間が省けて、作業効率が上がります。

おすすめの大きさは?

A3サイズがおすすめです。
理由は小さなライトテーブルだと、ライトテーブルより大きいサイズの賞状を筆耕する時に、ライトテーブルからはみ出た賞状の角を誤って折ってしまったりするからです。逆にあまり大きすぎると保管や扱いにくさを感じます。

どこで購入できるの?

通販で購入可能です。トレース台で検索するといいですよ。
私が今使用しているライトテーブルは、初仕事の時に通販で購入したものです。初期投資として良いものを選んだので、15年経った今でも故障することなく使用しています。検索する時はライトテーブルよりトレース台で検索をした方が商品がたくさん表示されます。
②墨汁 ③小筆 ④硯
②墨汁
墨汁は墨運堂の賞状・目録用の墨汁を使用しています。墨をすっての作業は、枚数が多いと大変だし、墨汁なら均一した墨色で、滲むことなく綺麗に仕上がりますのでおすすめです。

普通の墨汁と何が違うの?

普通の墨汁より色が濃く筆の滑りも良いです。乾きが速いのも特徴です。
③小筆(細筆)
現在使用している小筆は、一休園の「小 初霜」という主原料極上が極上純玉毛のかな用の筆になります。とても柔らかくしなやかで腰のある筆で、墨の含みもよく細くも太くも書くことができるのが特長。日本筆は、職人による手作業で作られているものは質も良く長持ちします。

小筆の種類が多くて迷うけど、お手頃価格の筆のおすすめは?

仮名や細字に使用する小筆(細筆)は8号~10号。日本筆と中国筆(唐筆)があり、中国筆の方が価格は安めです。中国筆の中でも選毫円健 (せんごうえんけん)は有名な筆で、筆耕士の間でもよく使われていますよ。穂先が割れたりするので、数本の予備を用意するようにしましょう。
④硯
硯は墨汁を入れて使用するのでこだわる必要はないかと思いますが、細字の時はいつも扱いやすい小さめの硯を使っています。写真の硯は山梨県の伝統工芸品でもある甲州雨畑硯です。雨畑硯は中国硯にも勝る良石として黒石の緻密な粘板岩で自然が造形した逸品です。
⑤プリンター
⑤プリンター
プリンターは、賞状本文中の部分書きを筆耕する時に、前後の文字とのバランスを見るための下敷きとして、賞状をコピーするための道具です。
以前はA3サイズのプリンターを使っていましたが、サイズの大きなプリンターは価格が高めです。現在は、お手頃価格の家庭用プリンターで筆耕部分だけをコピーしたり、1枚の賞状を左右に分けてそれぞれコピーして貼り合わせるなど、工夫をして使っています。
道具<常備編>
筆耕作業で筆置きや文鎮は、代用できるものがありますが、お気に入りの道具を使うことで、筆耕作業のモチベーションも保たれます。
⑥筆置きと文鎮
⑥筆置きと文鎮
筆置きは筆耕時の筆を休める時に置くものです。私は、焼き物が趣味の友人に作って頂いた筆置きを使用しています。文鎮はレイアウト下敷きの上に置いた賞状等の用紙がずれないようにするための道具。
自分のお気に入り仕事道具で、やる気アップにつながっています。
⑦両刃カミソリと消しゴム
⑦両刃カミソリと消しゴム
両刃カミソリは書き損じの字を修正する時に、用意しておいた方がよい道具です。予備の用紙があれば書き直しが可能ですが、少しの修正なら削って上から書き足したほうが効率的です。
紙質にもよりますが、修正箇所を多方向から薄くやさしく擦り、消しゴムで削った面を平にならしてから書き直します。砂けしでは用紙を削り過ぎてしまうので、両刃カミソリと消しゴムのペア使いがおすすめ。修正箇所をきれいに仕上げることができます。

両刃カミソリでないとダメなの?

両刃カミソリがない時はカッターでも代用できます。カッターを使用する時は必ず古い刃を折り、新しい刃で角度を調整しながら少しづつ削っていけば上手く修正箇所が削れていきますよ。
道具<便利編>
定規・鉛筆・鉛筆削り器は、賞状のフォーマットや下書きをする上では、必須アイテムに入りますが、下書き不用の場合は、別の使い方もします。
⑧定規・鉛筆・鉛筆削り器
⑧定規・鉛筆・鉛筆削り器
定規は、レイアウト下敷きを作る時に使う他、筆耕依頼の原稿の一覧表などの見間違いによる書き損じを防ぐために使っています。
原稿の上に定規を置いて、一行ずつずらして確認しながら確実に筆耕していきます。これは定規ではなくても、封筒や下敷きなどでも代用できます。
鉛筆は下書きをする時に使用。レイアウト下敷きに何度も文字を書いては消す作業をすることから、柔らかいBや2Bの鉛筆を使うようにしています。
消しゴムで消した後の鉛筆のあと残りが目立たなく、レイアウト下敷きの長持ちにつながります。鉛筆削り器は削ったカスがケース内に収まるものが便利でおすすめです。
⑨ウエットティッシュ ⑩ヘアクリップ
⑨ウエットティッシュ
筆耕作業を一休みする時や墨汁の濃度が濃くなって、筆先がやや重くなったり乾燥が気になって筆先を整えたい時に濡らしたティッシュを使います。小筆の時は濡らしたティッシュで十分。終わったら捨てるだけなので片付けもラクです。
ウェットティッシュは筆耕作業中に手についてしまった墨をとるためのもの。また道具の気になる汚れを拭くのにも便利です。不注意で筆を思ってもみない方向に落としてしまうこともあります。あると安心のウエットティッシュです。
⑩ヘアクリップ
筆耕中に前髪やサイドの髪が垂れてこないようにヘアクリップで顔周りの垂れそうな髪を抑えます。今使用しているものは100円ショップで売っているものですが、髪に留めたあとが付かないところがお気に入りです。
以上が私の筆耕作業時の道具10選になります。
おわりに
筆耕の仕事を始めた当初は、手元にある筆耕道具を使用しながら作業を進め、その過程で自分に最適な道具を整えていくことがおすすめです。
筆耕作業は落ち着いて集中しなくてはならないので、作業前に心と一緒に筆耕道具を揃えて作業環境を整えましょう。

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